今年も残り少なくなりました。一年の月日は泡沫（うたかた）のようです。子供の頃は「早く来い、来いお正月」と待ち焦がれていたものです。しかし今は、正月はゆっくり来てくれ、すこし休憩して来てくれ、の心境です。皆さんはいかがですか。
私が生まれてくるまでの宇宙の長い時間、そして私が死んだ後の長い時間を考えると、人間の一生なんて一刹那（せつな）です。（刹那は七十五分の一秒。一日は六百四十八万刹那）それを考えると欲も得もなくなります。しかしそれでも、喜怒哀楽、毀誉褒貶（きよほうへん）のこの世の流れの中を、しっかり生きてゆかなくてはなりません。
教育者森信三さんの有名な言葉があります。「流れる水に字を書いてゆくことは、はなかいことである。しかし巌頭に文字をきざむように書かねばならない」と。私も同じように、与えられた自分の人生を、しっかり 生きてゆきます。
今年は会社設立五○周年ですが、お陰様で業績は順調に推移しています。四月にケン化釜を三基増設しましたが、もう不足気味です。シャボン玉の輪が皆さまのクチコミや新聞広告で広がり、週刊金曜日の「買ってはいけない」で押しあげ、朝日新聞編集長インタビュー記事、更に九月の坂本オペラ「LIFE」の大成功で一気に上昇しました。
七月に過去最高の売上げを記録し、九月にそれを更新するという嬉しい悲鳴を上げています。これも皆さまのご支援の賜物と感謝申し上げます。
また、昨年六月から会社で取り組んできたISO14001（世界標準化機構）も、「シャボン玉グループ」で認定されました。これは石けん業界では初めての取得です。弊社の環境保全対策が世界的に認められたことになり、これも大きな勲章です。
製造部門から販売、通販、物流部門すべてで認証されたのです。そしてなによりも、この取得に全社員が心を一つに結束したことは、会社にとっても大さな財産になりました。社員の皆さんに私は感謝するのみです。
友の会の登録会員も十三万人を突破し、正会員は三万人を超しました。まさに順風満帆ですが、外野の風当たりも強くなっています。出る杭は打たれるのでしょう。ただただ謙虚に受け止めています。
とかくこの世は、合えば離され、名を成せば謗（そし）られ、角があれば挫（くじ）かれ、身分高ければ批判され、何事かを成せばうち壊され、賢ければ謀され、愚（おろか）であれば騙（だま）される。と、言うそうです。
禍を受ければ心が警戒し、警戒すると行為が慎重になり、慎重になれば思慮が練られ、物ごとの道理がよく分かるようになる。また慎重になると禍を免れ、禍を免れると寿命を全うする。 寿命を全うして、成功するならば富貴も得られる。寿命が長く富貴であることを福と言うのであれば、つまり福は禍のあったことが原因になる。禍は福の寄るところ、禍あって後に人は成功するのではないか。下世話に言えば「苦は楽の種」です。
今年後半は製造が間に合わず、品切れで一部の方にご迷惑をおかけしました。来年はこのようなことがないように、増産設備に取り掛かりました。会社を大きくするのが私の目標ではありません。一つの石けんで、明るく楽しい毎日を過ごしておられるシャボン玉ファンの人たちに、品切れは許されません。
増設資金の苦労もありますが、真っ直ぐ前を向いて、良い物を広めるという初心を忘れず、皆さまと一緒に大きく羽ばたきたいと願っています。「行（ゆ）くに径（こみち）に由（よ）らず」の信念で。
|
歳の瀬や 明日持たるる 室船 |
シャボン玉友の会だより＜NO.51＞
